ERC-721 vs ERC-1155、どっちで実装したほうがいい?改めて両者の違いを学んでみた。

b-men
2026-07-01
2026-07-01

NFT を作ろうとすると、最初に「ERC-721 と ERC-1155、どっちを使えばいいの?」という選択にぶつかります。
なんとなく「NFT といえば ERC-721」のイメージで進めていたのですが、案件でゲームのアイテムっぽいものを扱う話が出てきたタイミングで、一度ちゃんと整理しておきたくなりました。
というわけで、初心者の自分が改めて両者の違いを調べてみたメモです。 

そもそも「ERC」って何?

「ERC-721」「ERC-1155」の頭についている ERC は、Ethereum Request for Comments の略です。
直訳すると「イーサリアムへの提案・意見募集」といった意味で、イーサリアム上での「こういうふうに作りましょう」という共通ルール(標準仕様)の提案集 のことです。

その「トークンに関するルール」のなかでも代表的なものが、

  • ERC-20: みんなが知っている、いわゆる「仮想通貨(暗号資産)」を作るためのルール。
    1個1個に区別がなく、お金のように交換できるトークン向け。
  • ERC-721: 1個1個が「世界に1つだけ」の NFT を作るためのルール。
  • ERC-1155: 「数量があるもの(ERC-20 のような)」と「世界に1つだけのもの(ERC-721 のような)」の両方を、1つの規格でまとめて扱えるルール。

という関係になっています。

ざっくり言うとどう違うの?

一言でいうと、こうです。

  • ERC-721: トークン1個1個が「世界に1つだけ」。NFT の元祖。
  • ERC-1155: 1つの仕組みで「世界に1つだけのもの」も「大量にあるもの」も、まとめて扱える。

例えるとERC-721 は 美術館の絵画 です。
1枚1枚がオリジナルで、同じものは2つとありません。持ち主も1人だけ。

ERC-1155 は ゲームのアイテム箱 です。
同じ箱の中に「伝説の剣(1本しかない)」と「回復ポーション(5,000個ある)」を一緒に入れて管理できます。

図で見る、構造の違い

文章より図のほうが一発でわかると思うので、それぞれの「トークンの持ち方」を描いてみました。

ERC-721:1つの作品に、持ち主は1人

 それぞれの作品が完全に独立していて、持ち主は必ず1人。 「数量」という考え方はなく常に1つです。美術館の絵画と同じですね。 

ERC-1155:1つの仕組みの中に、いろんな種類と「個数」がある 

同じ仕組みの中に「世界に1本だけの剣」と「5,000個あるポーション」を共存させられます。
発行する個数を「1」にすれば世界に1つだけのもの(NFT)として、たくさん発行すれば普通のアイテム(大量にあるもの)として振る舞う。
この柔軟さが ERC-1155 のいちばんの特徴です。

何が違ってくるの?(実務的なポイント)

1. たくさん配るときの手間とコスト

ここがいちばん体感に効いてきます。

ブロックチェーンでは、トークンを送るたびに「ガス代」という手数料がかかります。
ERC-721 は基本的に 1個ずつのやり取り、ERC-1155 は複数の種類・個数をまとめて一度に送れます。「剣1本とポーション100個を、1回の操作でまとめて送る」みたいなことができます。

※ここで「まとめて送れる」のは送るものの種類であって送る相手ではありません。
ERC-1155 のまとめ送りも、送り先は1人だけ。なので「同じものを10人に配りたい」という場合は、ERC-721 でも ERC-1155 でも標準機能のままでは1回1人ずつになり、ここに大きな差はありません。大勢へ一括で配るには、どちらの規格でも配布用の仕組みを自分で用意する必要があります。 

2. 「持ち主」の管理のしかた

  ERC-721 ERC-1155
考え方 「この作品の持ち主は誰?」 「この人はこれを何個持ってる?」
世界に1つを表現するには 「1トークンに持ち主1人」の形が最初から決まっている 発行個数を「1」にして表現する

ERC-721 は「この作品は誰のもの?」という問い方をします。
ERC-1155 は「この人はこれを何個持っている?」という問い方をします。

3. 作品の情報(画像や名前)の登録

NFT には画像や名前などの情報(メタデータと呼びます)が紐づきます。 ERC-721 は基本的に 1作品ごとに1つずつ 情報を登録していく想定です。 ERC-1155 は 1つのテンプレートを用意して使い回す 方式が標準なので、種類が多いときに登録が楽になります。

どっちで実装すべき?判断のしかた

ここまでをふまえて、選び方を図にしてみました。

「じゃあ最初から ERC-1155 でよくない?」問題

ここまで読むと、「ERC-1155 のほうが何でもできて便利そうだし、最初から全部それでいいのでは?」と思うかもしれません。私もそう思いました。

ただ、便利=いつでも正解、というわけではありません
1点ものしか作らないなら、いまでも ERC-721 を選ぶ理由が主に3つあります。

1. 「世界に1つ」を、仕組みが自動で守ってくれる
ERC-721 は、同じものを2つ作れないように規格そのものが作られています。
一方 ERC-1155 で「世界に1つ」を表現するには、自分で「発行個数を1にする」というルールを守る必要があります。
逆に言うと、
うっかり間違えて同じものを5,000個作ってしまう、という事故が起こりえます。1点ものの作品でこれは地味に怖いところ。ERC-721 なら仕組みが事故を防いでくれます。

2. アートや会員証の世界では ERC-721 が「定番」
アート作品やコレクションは、昔から ERC-721 が標準として使われてきました。
そのため、それらを売り買いするサービスや各種ツールも ERC-721 にいちばん慣れています。
ERC-1155 でも扱えますが、表示のされ方が思った通りにならない、といった細かいズレが出ることがあります。
「みんなが使っていて予想外が少ない」のは、1点ものにとっては立派なメリットです。

3. シンプルなほうが、つまずきにくい
ERC-1155 は便利なぶん、常に「個数」という考え方がついて回り、覚えることや気をつけることが増えます。
1点ものしか作らないなら、そのぶんの余計な複雑さを背負うことになります。やりたいことがシンプルなら、道具もシンプルなほうが扱いやすい、というわけです。

まとめると、こういう線引きになります。

  • 種類が増えそう / 個数の概念がある / たくさん配るかも → 最初から ERC-1155。
  • ずっと1点ものしか作らないと言い切れる → ERC-721 のほうがシンプルで安全、相性も良い。

改めて整理すると、こういうことでした。

  • ERC-721 は「1つのトークンに持ち主が1人」という形が最初から決まっている、純粋な NFT 向け。情報も実例も豊富で安心して使えるので、アート作品や会員証のような1点ものなら迷わずこれ。
  • ERC-1155 は「1つの仕組みで、世界に1つのものも大量にあるものも、まとめて扱える」便利な規格。たくさんまとめて送れて手数料も節約でき、いろんな種類を1か所で管理できるのが強み。ゲームアイテムや大量配布が絡むならこちら。

ちなみに調べていて分かったのですが、作ったトークンは一度ブロックチェーンに「公開(デプロイ)」すると、基本的にあとから中身を書き換えられません。
そのため「やっぱり別の規格に変えたい」となると、新しく作り直して引っ越す……というかなり大変な作業になるようです。
どちらの規格にするかは、公開する前にしっかり決めておくのが大事そうです。