テスターレベル依存を脱却するテスト仕様書を作る②

LyRH1819
2024-06-25
2024-06-25

・誰でも分かるテスト仕様書を作ろう②
前回、「初めてそのシステムや機能に触れる人でも分かるテスト仕様書を作ろう」と言う目的に対しての第一段階として、誘導を行うと言う事を説明しました。
その時に例として作成したテスト仕様書を元にして、更に見やすく分かり易いものにしていきましょう。動作的部分について紹介しようと思いましたが、もう少しだけ見やすさと言う部分について紹介させてください。

例題:複数の画面にメッセージA/B/Cの表示を追加
上記の様な変更があった場合、確認すべき事は「その追加されたメッセージ3種はそれぞれの画面で表示されているか」と言う部分を確認する事になりますね。この追加されたメッセージの表示を確認すると言うだけならば簡単だと思うでしょう。実際テストとしてはとても簡単です。

簡単な図になりますが、こんな感じで画面①以降にも同様のメッセージが表示が追加されたとイメージしてください。
(追加メッセージ以外にも様々な内容が表示されていると思ってください)
20240521


前回の内容を踏まえて、実際に確認するテスト項目を作成してみたのが以下の形になります。
20240521-a
メッセージ表示を確認するだけなので、内容も簡単で特に見辛いとか分かり難いと言った部分は無いかと思われます。確認する箇所が1画面だけならばこれで終わりとなりますが、例題は複数の画面となっています。つまり、同じ内容が何度も繰り返し登場する事になる訳ですね。要するにその分テスト数が増えていく事になります。察しの良い人はもう分かったと思いますが、何も考えずに項目を並べると大変な事になる訳ですね。

もし確認する対象が5画面だった時、何も考えずに追加しただけだとこんな感じになります。
20240521-b
これを見た時、大半の人はきっとこう思う事でしょう「見辛い」と。簡単な内容の筈なのに目が滑っていきます。例題の内容により確認箇所が3箇所だけなのでまだこれでもなんとかなりますが、
これが5箇所以上になったり対象画面が更に増えたりすると、とてもじゃないですが分かり易いとは言えないでしょう。このままだと慣れている人もそうでない人もやり辛いので、これを修正していきましょう。

この様な場合の修正方法は主に2つあります。
①この表示のまま、見やすさを改善する
②画面別にテスト項目を分ける

①は確認数が多くない時、②のやり方は確認箇所が多い場合に適しています。
目安としてはテスト項目として5以上あるのならば、②のやり方を推奨します。

まず①についてですが、実際に改善したものを見てもらった方が早いでしょう。
20240521-c
どうでしょうか。テスト項目に色付けをするだけでかなり分かり易くなったと思います。
前回説明した誘導を今回は空白ではなく、色付けで行っている訳です。
青色部分で一画面、緑色部分で一画面と区切られている事で判別しやすくなりました。
テスト実施者としても色が変わっている事で、意識の切り替えが行いやすく目が滑ると言う事も減るかと思います。

この方法で注意しないといけないのは、色付けする際に強い色を使用しないと言う事です。
赤や黄と言った主張が強い色にしてしまうと、逆に目に眩しくなり文字が読み取り辛くなります。
なので使うとすれば薄い”青/緑/ピンク/紫”辺りがおすすめです。

この方法には気を付けなければならない事があります。それは「元々が見辛いぶん、色付けする際にミスしやすい」と言う事です。テスト設計者側で色付けする際に途中でズレる可能性は決して0ではありません。繰り返し確認になる部分が多くなればなる程にリスク上がるので、先に言った様に②のやり方が適性高くなります(テスト実施者ではどうしようもない、テスト設計者側でのミスとなるので大変に不味い訳です)。

因みにですが赤や黄と言った主張の激しい色については、不具合発生や動作が怪しい個所に使用します。それらについてもまた説明する回を用意する予定です。

次に②のやり方についても見て行きましょう。
此方の場合も、例を見てもらった方が早いので②のやり方で作った物を用意しました。
20240521-d
この様な形で画面事に項目を切り分けて確認する事で分かり易さを確保しています。
テストNo.とテスト項目の間に【画面①:追加メッセージ表示確認】と言った小タイトルを入れる場所を用意する事で、誘導と意識のリセットを同時に行っています。テスト実施者としても「ここからここまでが一つの画面で確認する内容なのだな」と簡単に分かります。
これはテスト項目が増えれば増える程、確認対象が増えれば増える程にそれぞれ切り分ける事の利点は増していきます(空白、小タイトル、内容~空白と繰り返しになるので流れ作業のようにもなり辛い)。

どの様な内容であっても①よりは②の方が、「誰でも分かるテスト仕様書を作ろう」と言うテーマに対してより近いものではあります。今後の事も考えると基本的にどの様な内容であっても、②のやり方で作成していく事が推奨されます。ただ①で紹介した色付けと言うやり方は、②と組み合わせる事もありますし一つの画面で大量の内容を確認する時等にも出番があります。

今回は新たにテスト実施者を誘導する為に色分けと小タイトルが登場しました。
ただの空白や改行だけでなく、これらを組み合わせる事でより分かり易く、テスト仕様書作成者や実施者にとって利用しやすいものが出来上がります。

今回の大事な所をまとめると次の2点になります。
・繰り返しの内容が続く際、
色付けで見やすさを確保する事
・小タイトルを追加する事でテスト設計者/テスト実施者両方にとって分かり易くなる

今回は前回の補足的内容になってしまいましたが、以前よりも分かり易い仕様書に近づいたと思います。