― 自然言語×正規表現のハイブリッドが生む生産性 ―
はじめに
AIとの対話は自然言語が中心ですが、時に形式言語――たとえば正規表現(Regular Expression)――を併用することで、より正確で効率的な指示が可能になります。
この記事では、
-
自然言語と形式言語の違い
-
両者を併用する利点
-
実務で役立つ具体例
を交えながら、AI時代における“人間の伝え方の質”の重要性を解説します。
自然言語と形式言語の違い
特徴 |
自然言語 |
形式言語 (例:正規表現) |
---|---|---|
柔軟性 | 高い。曖昧な表現も可能 | 低い。明確なルールに従う |
解釈の幅 | 多義的。 文脈によって変化する |
一意的。 常に同じ動作をする |
記述の難易度 | 誰でも使える | 学習が必要 |
機械との相性 | やや曖昧に伝わることも | 精密に伝わる |
🔍 例:自然言語だけ vs 形式言語を併用
自然言語だけ:
「メールアドレスだけ抜き出して」
これは人間にはわかりますが、AIにとっては「何をメールアドレスと判断すべきか」が曖昧です。
自然言語+形式言語(正規表現):
「正規表現
[\w\.-]+@[\w\.-]+\.\w+
に一致するメールアドレスを抜き出して」
→ AIは極めて高精度に、意図通りの結果を返してくれます。
自然言語「だけ」と自然言語+形式言語「併用」の違い
🎯 目的:「ログファイルからエラー行だけを抽出したい」
自然言語だけの場合:
「ログファイルからエラーを含む行を抽出して。たとえば 'ERROR' や 'Exception' など。」
→ AIは曖昧なルールで抽出を試みます。
→ エラーでない行まで拾ったり、漏れたりすることも。
自然言語+正規表現の場合:
「以下のログから、
ERROR|Exception
にマッチする行だけ抽出して」
^(.*(ERROR|Exception).*)$
→ 指示が明確になり、余計な結果や漏れを防げます。
実践例:CSVファイルから電話番号だけを抽出
名前,電話番号,メール
佐藤太郎,080-1234-5678,satou@example.com
田中花子,,tanaka@example.net
山本次郎,+81-90-9876-5432,yamamoto@example.org
🧍 人間がAIに自然言語で依頼する:
「電話番号が書かれている列から、すべての電話番号を抽出して」
→ 結果にブレが出やすく、+81の番号が漏れることも。
🤖 自然言語+正規表現で依頼:
「正規表現
(\+81|0)\d{1,4}-\d{1,4}-\d{4}
に一致する電話番号をすべて抽出して」
→ 国番号形式も含めて正確に抽出可能!
なぜ今「形式言語」なのか?
ChatGPTなどの生成AIは、自然言語の理解が得意です。しかし、曖昧な表現は解釈に差が出るリスクがあり、特に構造的な処理においては誤解を招きやすいのが現実です。
だからこそ、人間側が「形式言語」で補足してあげることで、AIが本来持つ力を最大限に引き出すことができます。
まとめ
-
自然言語だけでは伝わりきらない処理も、正規表現などの形式言語を併用すれば一発で伝わる。
-
エンジニアにとって、正規表現のような形式言語は「AIとの精密なインターフェース」。
-
完璧に書けなくてもいい。「少しわかる・使える」だけで、AIから得られる結果が大きく変わります。
最後に
今後AIはますます賢くなっていくでしょう。しかし、「人間がどう伝えるか」の質は変わらず重要です。
自然言語の“やわらかさ”と形式言語の“鋭さ”を併せ持つことこそ、AI時代の新しいスキルセットです。
明日からぜひ、AIとの対話に“ちょっとだけ正規表現”を混ぜてみてください。
きっと、その威力を実感できるはずです。